アートサロン: フランスを巡る – フランス地方のアート散策(1):講座ご報告(2014年10月16日)

2014年10月18日 土曜日

 

前回好評だったフランス地方アート散策、今回は通訳付きで開催しました。当初は、前回2回に渡って紹介されたものを1回のダイジェスト版にまとめる予定でしたが、やはりどの地方アートも魅力的で割愛が忍びなく、今回も2回に分けてご紹介することになりました。

ガイドブックなどでは紹介されていない美術館、イベント、建築物など、2度目3度目のフランス旅行を考えている方なら必見です。大画面のディスプレイに流れるビデオなどを見ていると、まるでその地を旅しているような気分になります。フランスのアート文化の深さを思い知らされます。
今回紹介された地方とそのアートは最後にご報告をのせておきます。近々フランスへ旅行を計画されている方は是非参考になさってください。

プレゼンのあとはもちろんティータイム。プレゼンの前にロランスは言いました。「ちゃーんと聞いていた人にはご褒美に私の焼いたチョコレートケーキをあげるわよ。」

ティータイムのガトー・オ・ショコラ

ティータイムのガトー・オ・ショコラ

 

ティータイムのテーブルでは全員にケーキがふるまわれました。(よかった、よかった!!)お茶は前回もいただいた「マリー・アントワネット」の紅茶。パッケージがとてもかわいい。「貴婦人の城を見たあとだから、やっぱりマリー・アントワネットだわね。」とロランス。

マリー・アントワネットの紅茶

マリー・アントワネットの紅茶

 

テーブルの中央にはクリスタルのオーナメントが。星形のものは紹介のあったバカラ。ハート型はラリック。こっそりちゃんとテーブルの上にまで地方アートが並べられていました。お見事!!

バカラとラリックのオブジェ

バカラとラリックのオブジェ

 

– Alsace :  cité de l’Automobile ( collection Schlumpf )

アルザス地方:自動車都市 (シュランフ・コレクション)

*車に興味のない女性にもお勧め。古い繊維工場そのままのクラシックな内部と前衛的な建物正面のコントラストもおもしろい。

– Lorraine : Baccarat

ロレーヌ地方:バカラ

*さすが歴史あるクリスタルメーカー。MOF(Meilleur Ouvrier de France :優れた技術を持つ職人に与えられる称号)を持つ職人の数はフランス国内でもピカイチ。デザイナーとのコラボでは日本人、高田賢三や堀木エリ子なども起用された。伝統を守りながら、常に新しいものにチャレンジしている。近年はアクセサリーもてがけている。ただし、リングは壊れやすいのでお勧めではないとはロランスの体験談。

– Champagne-Ardenne : Maisons Champagne : Collaboration avec des artistes

シャンパーニュ・アルデンヌ地方:シャンパン:アーティストとのコラボ

*ドン・ペリニョン(Dom Perignon)は、なんとベネディクト会修道士の名前。彼がシャンパン技術をこの地方に伝え、修道院で金色に美しく泡立つ飲み物を作り出したのが始まり。秘訣は数種類のブドウを組み合わせて圧搾することだとか。

– Picardie : Cathédrale d’Amiens

ピカルディ地方アミアン大聖堂

*フランス最大規模のゴシック建築のカテドラル。ユネスコの世界遺産にも認定されている。必見は夏の夜、イリュミネーションに映し出される正面入り口のレリーフ。修復時にかつて多色装飾が施されていたことが判明。13世紀のカラフルだった彫刻群をデジタル映像を駆使して再現している。

– Nord-Pas de Calais: Musée de la piscine de Roubaix         

ノール・パドカレ地方ルベのプール美術館

*この地方に建てられた新ルーブル美術館よりお勧めとロランスが言うのは、かつてのプールの建物を改装したルベ美術館。プールを囲んで美術品が美しく並べられているだけでなく、シャワールームなどにも絵などが展示されているほか、陶器や家具、織物のコレクションなどが豊富。

– Normandie: Tapisserie de Bayeux

ノルマンディー地方バイユーのタペストリー

*全長70mのタペストリー。麻地に染色した毛糸で刺繍されている。テーマはノルマンディー公のイギリス征服の戦い。当時の人々の服装、道具、建物なども描かれており、中世を知る数少ない貴重な資料でもある。

– Bretagne: L’école de Pont-Aven

ブルターニュ地方ポンタヴァン派

*ポンタヴァンはブルターニュ地方の村。ベーコンをはじめアメリカ人の画家たちが夏を過ごしにやってきて、やがてゴーギャンもこの地で絵画の実験を始め、新境地を開く。原色を使い、遠近法を無視した幾何学的な構図に、輪郭の縁取り、ディテールの省略といった総合主義の始まり。この運動は20世紀のフォービズムに大きな影響を与えた。

– Pays de la Loire: Le voyage à Nantes

ペイ・ドゥ・ラ・ロワール地方:ナントの旅

*ナント市は1989年から「文化」を全面に押し出した。一年中、町のいたるところ10kmに渡って、常設・仮設のアートオブジェやパフォーマンスが楽しめる。町を歩いている間いつ、どこで何に出くわすかわからない。アートとの出会いがそこかしこに仕掛けられている。夏が最も賑わうらしい。

– Centre : Le Château des Dames

サントル地方:貴婦人たちの城

*小さな川の上に建つシュノンソー城。15世紀終わりから20世紀まで女性がいつも城主だったという、美しい城。しかし、その女性たち(アンリ2世の妻、カトリーヌ・ド・メディチや愛人のディアヌ・ド・ポワティエなど)の人生の悲喜こもごもを見続けてきた城。女主人たちの歴史と一緒に訪れてみたい。

Bourgogne: Tour de France de Mérimée- Abbaye de Cluny

ブルゴーニュ地方:メリメのフランス巡り - クリュニー修道院

*「カルメン」で有名なメリメは、歴史的建造物保護に乗り出した政府の命を受け、カメラを手にしてフランス中の調査に回った。彼のおかげでどれだけ多くの建物が救われたかしれない。この地方のクリュニー修道院もそのひとつ。909-910年に建てられたロマネスク様式の建物。

– Franche-Comté : Chapelle Notre Dame du Haut

フランシュ・コンテ地方:ノートルダム・デュオー礼拝堂

*1950-1955年にル・コルビュジエによって建てられた礼拝堂。当時としては余りに前衛的過ぎた景観は人々から「醜悪」という酷評を浴びた。しかし、自然と礼拝堂の佇まいの調和の美しさは徐々に認められていった。

 

サロンの中で使われた画像などは、当日参加された方のおひとりのブログにたくさん載っています。そちらも是非ご参照ください。P4240381

http://tuesgenial.exblog.jp/22482196/

 

 

 

 

 

アートサロン, カルチャー講座

フランス菓子サロン:講座ご報告(2014年9月29日)

2014年10月3日 金曜日

P9290506  table(2)

 

9月末とは思えない強い陽射しながら、さすが空気はカラッとして爽やかです。チャイムを鳴らすと今日のお天気のように爽やかな笑顔のフロランスが扉を開けて、「Bonjour ! ボンジュール!」と迎えてくれます。
今日初めて参加された方々は、きれいに手入の行き届いたピカピカのリビングやキッチンに思わずため息。オーブンのガラス扉など買いたてのように曇りひとつない美しさ。まるでショールームの中にいるようです。(今度、「お掃除講座」をフロランスに開いてもらいたいものです…。)
さて、今日のお料理はキッシュと淡雪卵(ウッフ・ア・ラ・ネージュ)にフィナンシエ。キッシュもフィナンシエもフランス人マダム達が日常的によく作るもので、他のサロンでも何回かいろいろなマダムが自慢のレシピをご披露くださいました。しかし驚くことに、一度たりとも同じ内容に出くわすことがありませんでした。本当にフランス料理の奥深さを感じます。今日は「バルサミコ酢」が大活躍のようです。楽しみです!!

 

P9290519 Quiche aux oignons caramelises (2)

Quiche aux Oignons caramélisés, Parfum de Gingembre accompagnée d’une salade verte assaisonnée d’une vinaigrette balsamique(こんがりオニオンのキッシュ、ジンジャー風味、グリーンサラダ、バルサミコドレッシング)

 キッシュはパイ生地で焼くものと生地なしで焼くものの2種を作ります。忙しいときにはフランス人マダムたちもパイ生地なしで作ったりするそうです。そのパイ生地ですが、何とバルサミコ酢を加えます!!小麦粉、コーンスターチ少々、バター(かなりたっぷり)、全卵1こ、ここに隠し味としてバルサミコP9290514 salade verte酢大さじ1、砂
糖小さじ1、塩少々がはいります。バルサミコ酢をこのように使うのが目下フランスではトレンドなのだ
そうです。確かに焼き上がりはコーンスターチも入っているからでしょうか、サクサク感が際立って美味。フィリングの玉ねぎはすりおろしたしょうがといっしょにオリーブオイルで炒め、さらに赤ワインも加えて水分がとぶまで加熱し、こんがり焼き色をつけます。これを空焼きしたタルト生地の上に敷き詰め、卵、ミルク、生クリームを合わせた液を上から注いでオーブン(180℃)に入れて30分焼きます。玉ねぎの甘味がとてもおいしいキッシュの出来上がりです。

 

P9290502  oeufs a la neige

Oeufs à la neige(ウッフ・ア・ラ・ネージュ)

日本語では「淡雪卵」といいますが、まさにふわふわの今にも溶けてしまいそうな雪の塊を思わせるデザートです。フランスではどんな小さな
レストランでも扱っているとてもポピュラーなデザートだそうです。砂糖を数回に分けて加えながらしっかりと固く泡立てた卵白を大きなスプーンで適量すくっP9290525  oeuf a la neige dans l'assietteて、沸騰したお湯の中に落としてポシェします。両面を返したら布巾などの上に並べて水分を切ります。別に作っておいたクレーム・アングレーズの上に浮かべて冷たく冷やしておきます。その上からカラメルソースをかけていただきます。今回のように大きな器に入れて各自取り分けるか、一人用の小さな深皿に入れてもおしゃれです。冷たく冷やしておくのがお勧めです。こんなデザートが出てきたら、テーブルは歓声の嵐間違いなしです。

 

 

P9290527 financiers

Financiers au miel (蜂蜜のフィナンシエ)

「財界人、資本家」という意味のこのお菓子、その由来は諸説ありますが、パリの証券取引所を中心とした金融街で流行った菓子だからとか、長方形の形が「金塊・インゴット」に似ているからなどいろいろです。「金塊」が一番説得力あるかもしれません。
今日習うフィナンシエの材料もちょっと変わっています。今回は小麦粉ではなく全粒粉、白砂糖のかわりにブラウンシュガーと蜂蜜、アーモンドパウダー少々、バター、そし全卵ではなく卵白5個分を使います。とにかく混ぜて、お好みの型に流し込んで210℃のオーブンで10分焼けば完成。とても簡単で、しかも1週間くらいは缶などに入れておけば保存可能。卵白がはいっているからでしょうか、しっとりながら軽やかで、蜂蜜の優しい甘さが絶妙です。

 

フランス人マダム達の台所はお宝の山。便利そうな料理グッズや珍しい食材が毎回のように登場します。参加者の方が「どこで買ったんですか?」と聞くと、意外なことに「合羽橋」とか「イケア」、「コストコ」「ニッシン」というお答えがよくかえってくるのですが、本日のフロランスのキッチンで発見したお宝は残念ながらMade in Franceでした。

P9290517  pot de vinaigretteドレッシングボトル。上部のレバーをくるくる回すと中のドレッシングが見事に撹拌されます。ドレッシングを入れて冷蔵庫で保存するのにもちょうどいいサイズ。野菜の絵もかわいい。

 

 

 

 

P9290486  serviette「Bon appétit ! ( さあ召し上がれ!)」と書かれたナプキン。だまし絵のようなフォークもおもしろい。

 

 

 

 

P9290503  decoなべ敷でしょうか。「MENU DU JOUR, Qualité Extra, Médaille d’or ( 本日のメニュー、絶品料理、金メダル)」と書かれています。料理上手なマダムのキッチンだからこそ堂々と置いておける代物ですね。赤色がとてもきれいだったのでついパチリ。

カルチャー講座, 菓子サロン

料理サロン:講座ご報告(2014年9月19日)

2014年9月21日 日曜日

夏休み明けの久々のマリオンのレッスンです。一気に秋が近づいてきたという感じの爽やかな一日。でもマリオンのマンションのロビーにはやたらと蚊がいて、デング熱騒ぎのただ中ですから、皆さん大騒ぎ。何とマリオンもたくさん蚊よけスプレーとか、虫刺されの薬など用意していました。情報をいち早くキャッチして、それに対応していく順応力はさすがです。

「蚊の大騒動」が静まったところでリビングに入ると、カラフルな、そこだけパッと花が咲いたようなテーブルが目に飛び込んできました。

P9190438  table

最近購入したというライヨールのナイフに合わせて、カラフルなドットのテーブルクロスがかけられています。このライヨールナイフ、フランス語ではLaguioleと書き、ラギオールと読みます。ラギオール村で造られる高級ナイフをラギオール、ライオール(この地方のオック語でラヨール)などと呼びますが、商標登録がないため、いろいろなところで同じ名前で生産されたナイフが出回っています。ブランド名として認められていないので、本物、ニセ物という区別にはならないそうですが、安物から高価なものまであり、品質もそれなりのようです。マリオンの新しいライヨールの柄は美しい色合いのアクリルガラス製で、しかも軽いです。切れ味も抜群。1本、15000円くらいはする代物です。赤、青、緑、紫、黄色、ピンクの6色が揃っています。テーブルの中央両サイドには、ナイフと同じ6色の羽がお皿に飾られています。今日のテーブルの主役はやはりライヨールのナイフのようですね。

さて今日のお料理は、魚と野菜のマリアージュ。アルザスワインの白、リースリングのCuvé Anne-Laure 2012がお供です。

P9190460  brochette (2) -

Brochettes de Thon et Concombre(マグロときゅうりのブロシェット)

ごま油、しょうゆ、しょうがのマリネ液に15分ほど漬けたまぐろを、ピーラーで薄切りにしたきゅうりで巻きます。まぐろの切り口に黒ゴマをまぶして出来上がbrochettes de Thon et de concombreり。とても簡単。フランス料理でも最近はごま油、しょうゆ、しょうがなどのアジアティックな調味料が使われるようになってきたのですね。まぐろのソフトな食感ときゅうりのパリパリとした食感がおもしろい。お酒のおつまみにも合いそうです。もっと刺激的な風味をお好みの方にはきゅうりで巻く時わさびを少々つけても、巻いた上から唐辛子を振りかけてもよさそうです。

 

Mousse de Saumon

Croustillant de Sésame, Mousse de Saumon et Carpaccio d’Aubergines Grillées

(サーモンのムース、焼きナスのカルパッチョ、ゴマ風味のカリカリパイサンド)

折り込みパイ生地にゴマをのせてこんがり焼きあげた台の上に焼きナスのマリネをのせ、その上にサーモンのムースをのせ、もう一枚のパイをのせます。最後にミニアスパラの穂先を飾ります。グリーンサラダとバルサミコクリームを添えていただきます。こちらも様々な食感が楽しめます。パイはサクサクパリパリ、ナスはほどよい歯ごたえを残し、サーモンのムースはなめらか。小さなサイズに仕立てればアントレやアペリティフにもOKだそうです。見た目もおしゃれですが、結構ボリュームがあります。本日はメインの大役を果たしていました。

aubergines coupees

mousse de saumoncroustillant de sesameP9190473  creme balsamique                                                                                

 

panna-cota

Panna-cota coulis de Pêche blanche et Vin mousseux Café de Paris Pêche

(パンナコッタ、白桃のクリソース、カフェ・ド・パリ・ ピーチ)

Cafe de Paris Pecheこのパンナコッタの特徴は、クリームにもクリソースにもピーチのスパークリングワインが風味づけに入っていること。ピーチの香り高い、しかし思いのほか甘味を抑えた大人のワインです。缶詰の白桃をフードプロセッサーにかけてピューレ仕立てにしたクリソースのあとから、パンナコッタのツルッとしたクリームが追いかけてきます。どんなに濃厚な料理のあとでもこれならペロリといただけてしまいます。

今年の夏にバカンスでフランスへ帰ったマリオンは、友人たちに桜モチを作ってふるまったとか。すごくおいしいと言って食べた人とC’est  bizarre (妙な味ね!)と言った人と半分半分だったとか。道明寺粉やあんこ、桜の葉、桜の塩漬けまで買い込んで帰ったマリオンは、さながら日本食の伝道師!!南フランスの人口わずか100人の村でもついに日本の桜モチがデビューを果たしました。

 

cours de cuisine

 

 

 

カルチャー講座, フランス語, 料理サロン

プレゼント

2014年9月2日 火曜日

bouquet de roses「日本人は、外国人のホームパーティーに招待されると、かならずといってよいくらい、何か手土産を持参する。花とかチョコレート、ワインなど。最近はフランス人でもちょっとしたプレゼントを用意することもあるようだが、本来は招待された家へプレゼントを持っていくことは「せっかく招待してもらいましたが、私はあなたを招待することができません。だから、これはその埋め合わせです。」という意味で、独身男性などがよくとる方法。やはり、自宅へ招待することが最大の返礼であり、どうしてもすぐ感謝の気持ちを表現したかったら、後日カードや花を贈るのがいい。」

この話はある若いフランス人マダムから聞いたのですが、ちょっと考えさせられました。私にもこんな思い出があります。

ある日、フィンランド人の若いカップルをわが家に招待したところ、二人はフィンランドの国の説明ときれいな写真の並ぶ一冊の本を、カバーもかけずに持ってきて手渡しました。しばしフィンランドについての話に花が咲きました。和食は初めてという夫人に、はたしてテンプラなど口に合っただろうかとちょっと不安だった私のところへ、翌日彼女から大きな真紅のバラの花束が届けられました。それを見たとき、私の心配は一気に吹き飛びました。しばらくして、このカップルが食事に招待してくれたことは言うまでもありません。

P8290438  cadeaux

プレゼントといえば、フランス人はかならずそれを贈り主の目の前で開いてみます。勿論、「開けてもいいですか。」とまず断ってから。ただ、どんなに美しい包装紙に包まれ、きらびやかな趣向をこらしたリボン飾りがかけてあろうと、ビリビリ、バリバリと容赦なく破き捨てる「豪快さ」には思わず目をつぶりたくなりますが…。そしてどんな些細な品物でも、最大級の賛辞とジェスチャーで感謝の意を表します。だから彼らにとって、受け取ったプレゼントを部屋の隅とか棚の上に、まさに「棚上げ」しておく日本人の行動は、最初奇異に映るようです。「親しい友人の間では、やはり同じようにすぐ開けてみる」と、補足の説明をするようにしていますが、「開けないのは何故?」という質問には、「客の面前でがさがさと紙音を立てて開き見る行為は慎ましくない、と日本人は考える。(これ、フランス人にわかるかな?)」「プレゼントの中身ではなく、贈り主の心を受け取るのだから、あえて中身は問わないという意味で脇に置いておくのだろう。」と答えることにしています。

あるフランス人の男性は、日本人の友人から別の説明をされたそうです。「贈り主の目の前で開けてしまって、その品にがっかりした顔を見られないようにするためだ。」と。だとすると、フランス人は日本人よりずっと嘘をつくのに長けているということでしょうか??

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「大人の天国」VS「子供の天国」

2014年8月22日 金曜日

「そんな時はほっぺたに往復ピンタをくらわすのよ!」とブロンド美人のマダム。
「子供が言うことをきかない」とこぼす友達への返答です。

日本では子供に体罰を与えるのは家庭でも学校でもタブー視されていますね。子供を叩いたりせずに、話して諭すのが「いい教育」と考える傾向にあります。叩いてもせいぜいお尻を…と思ってしまいますが、どうやらフランス人の子供の教育は、時として「往復ピンタ」のように少々荒っぽいところがあるようです。もちろん、体罰を与えずに子育てをしているフランス人もたくさんいることでしょう。でもこの「往復ピンタ」教育の例は他でも耳にしました。同じ間違いを何度も繰り返したり、親の話を「フフン」と小馬鹿にして聞いていると、ピンタが飛んでくることもあるらしいです。知的で社交的なマダムたちからはちょっと想像がつきませんが。

いいこと、悪いことを徹底的に教え込む、理屈でわからなければ体で覚えさせる、ということでしょうか。実際、フランス人のママたちが子供を叱るときは、

「トホホ…」

「トホホ…」

はたでみていても相当怖いです。軍隊の隊長が兵隊に命令を下すように、頭のてっぺんから雷鳴のような声で叫びます。「さっさと部屋へ行って宿題をやりなさい!!」「何回言えばわかるの!これを片づけなさい!」「部屋の隅に立ってなさい!!」そう言われた子供は本当に部屋の隅に立ったまま、ママが「もうよし!」と言うまで待っています。10歳の子供が…です!

日本の家庭でときどき耳にする「うるせェな~」なんていう言葉を吐く子供はいません。フランス人の子供にとって親は絶対の存在です。そうして徹底的に仕込まれた子供たちは高校生くらいになると、今度は大人の仲間入りをさせてもらえます。お客様といっしょに食事をすることを許されたり、大人たちと議論をたたかわせたりするようになります。

フランスは「大人の天国」、日本は「子供の天国」だとつくづく思います。フランス人の教育には「性悪説」が基本になっているのかもしれません。「それはいけない、これもいけない…」と教え込んで紳士淑女を育てる。8歳の女の子が「早くハイヒールの靴を履けるようになりたい」と言ったのも、子供の目から見たら特権だらけの大人世界への羨望の表れなのかもしれません。一方の日本人は「性善説」で子どもを見ているのかもしれません。「子供はのびのびと育てなければ」「まあ、子供のしたことだから…」と社会全体が寛容。お客様のまわりでドタンバタンと暴れている子供を誰も注意しないし、遊びに気を取られて食事もそっちのけの子供に「ホラ、もう少し食べてェ!!」と懇願する母親もいます。

おっとりと(?)育てられた日本人の子供は概して「内弁慶」で外では「借りてきた猫」のように大人しいことが多いです。それに反して「怒髪天を衝く」級の怒り方をする母親に育てられたフランス人の子供たちは「外弁慶」。親の見ていないところでは相当な「悪ガキ」に変貌します。「この大人は甘いかな?」と値踏みをしているきらいがあります。

IMG_0002ある時小学校高学年の二人の女の子が日本語のレッスンを受けにやってきました。2回目だか3回目だかの授業の時、二人はわざと消しゴムを机から飛ばして、それを探す振りをして「おさぼり」を楽しみ始めました。二人で床に這いつくばり、クツクツ笑いながら消しゴムを探し続けるのです。そこで「家へ帰りなさ~い!!」と一喝。彼女たちのノートなどをまとめて突き付けて「勉強したくないなら、もう2度と来なくていいから!」とフランス人になったつもりで「怒っているぞオーラ」を発射。ママとそっくりの日本人を見て、さすがにこのあとのママとの悶着を想像してゾッとしたのでしょう。それからは本当に「借りてきた猫」のように従順になりました。

「鞭と鞭とあめ」で育てられたフランス人の子供は、「あめ」だけで育てられた日本人の子供に比べて、懐疑的でちょっと生意気で、扱いにくいところがあります。けれど大人になったとき、電車でさっとお年寄りに席を譲るのはフランス人です。居眠りをするか、スマホゲームに熱中して知らんぷりの日本人の若者を見ていると、子育てはフランス人ママに軍配をあげたくなりますね。

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アートサロン<Regarder la peinture autrement :違った視点で絵画を楽しむ 2>講座ご報告(2014年7月26日)

2014年7月29日 火曜日

何しろ暑い!!東京も35度という寒暖計の水銀が吹き出そうな暑さが続く中、本日の参加者の皆様、顔を真っ赤にして、生も根も尽き果てたという様子でご到着。

本日のアートサロンも外気と変わらず白熱した内容に。前回と同様のテーマで、ダニエルが、いろいろな角度から絵の楽しみ方をレクチャーします。内容はほとんどの部分が6月7日のサロンのものと重複しますのでここでは省きますが、ダニエル語録を少々まとめてみました。

Luis Melendez Melon et poires 1770 Museum of Fine Arts (Boston, U.S.A.)

Luis Melendez
Melon et poires 1770
Museum of Fine Arts
(Boston, U.S.A.)

 

 遠くから絵画全体を眺めるのは「知的喜び」を呼び起こす。美術史知識や様式などの学識を必要とするから。 近くから絵画を眺めるのは「視覚の喜び」をもたらす。描かれている「もの」のディテール、テクスチャー、仕上がりなど、思わぬ発見もある。

★ 遠くから見ていい絵が、近くで見てかならずしもおもしろいとは限らない。じっくり近くで見たいと思う絵は、しっかりとしたテクニックで描かれている絵だ。

★ 人体描写は「できるだけ本物らしく」表現すること。人物の顔は「できるだけ似ているように」描くこと。人体はデフォルメしてもなお「人体」と 認められるが、顔は例えば鼻の長さを少し変えただけでも、本人と似なくなってしまう。

★ 肖像画の人物は本当に当人とそっくりに描かれているだろうか。例えば「モナリザ」は?私達には確証がない。しかし、そこに描かれた人 間性、個性は明らかに画家からのメッセージだ。

★ 絵の「タッチ」は、その画家のサインと言ってもいいほど重要だ。

絵画芸術 1666 美術史美術館 (ウィーン)所蔵

絵画芸術 1666
美術史美術館
(ウィーン)所蔵

 

などなど、実際の絵と比べながら話が進み、本当に興味のつきないすばらしい講座でした。たまたまサロンの翌日の新聞にフェルメールの「絵画芸術」についての記事が載っていたので読みましたら、「画家は直接キャンバスに絵を描き始めている。」という箇所がありました。ダニエルの講座では、その部分を拡大して見せてくれましたが、絵の具で描いている下には白い線が描かれていて、あきらかにデッサンをしてから描いているのです。フェルメールは下絵を描かず、直接絵の具で描く画家だったので、この絵の中の画家はフェルメールではないのではないか、とダニエルは考えているそうです。やはり「絵に近づいてよく見る」ことは大切なことだと実感いたします。ダニエルのように一つの絵の前で3時間もじっくり鑑賞するのはなかなか難しいですが、並んでいる作品はすべて見ようと人の流れに押されながら、慌ただしく絵の前を通り過ぎていた展覧会の自分を反省いたしました。

「今度の美術展ではかならず、これぞと思った絵の前では近くからじっくり見てみます。」「知らないことが多かったです。今日のような知識を持って絵を見たらきっともっとおもしろいですね。」と、参加者の方々も収穫があったようです。収穫といえば、ダニエルは講座が始まる前にお出しした麦茶が大変気に入ったようで、「これは何というお茶?いつもの日本茶とは違って、この味好きですねェ。えッ?ムギチャ?ああ、この漢字ですね。ウン、ウン、本当においしい!!」と絶賛していましたが、後日メールが届き、「帰りにスーパーで「麦茶」を買って帰りました。」とのことです。ダニエルにも収穫があってよかった!!

 

 

アートサロン, カルチャー講座

「台風が参ります。」

2014年7月15日 火曜日

日本人でも敬語は厄介です。インターネットには若いビジネスマン向けの敬語のサイトがズラリ。まして外国人にとって敬語は超難関です。それでも日本でビジネスを展開したい外国人なら、この敬語をマスターしないと日本人の上司とも顧客ともいい関係が作れません。

フランス人の生徒C君がメールで「今度のレッスンに行かせてくれてありがとうございます。(教科書を)お持参します。」と書いてきました。「丁寧感」はにじみ出ていますが、日本人ならこうは書きません。しかもこの生徒は、敬語の学習のためレッスンを始めることになったのですから、初回レッスン時に、早速訂正することに。

「この度は、レッスンをとらせてくださり/お引き受けくださりありがとうございます。(教科書を)持参いたします。」がいいように思いますが、説明は多岐にわたります。

1)「…てくれる」は尊敬語なら「…てくださる」と言わなければいけないけれど、「レッスンに行かせてくださりありがとうございます。」もあまりしっくりしません。こちらのレッスンではなく、ほかの学校のレッスンをとりたいという申し出に許可を与えたようなニュアンスになってしまいます。

2)また「お持参」ではなく「ご持参」。「お」と「ご」の使い方の決まりは??よく外国人に聞かれます。一応、日本古来の言葉には「お」、漢語には「ご」という説明はあるのですが、例外もあり外国人泣かせです。「ご連絡」と「お知らせ」、「ご招待」と「お招き」。しかし、「お食事」「お返事」というのもあります。

3)また「教科書をご持参します。」と言われたら、「生徒が先生に教科書をあげる/見せる」と解釈してしまいます。

外国人には尊敬語より謙譲語の使い方のほうが概して難しいようです。謙譲語は、「相手に及ぶ自分の行為について卑下謙譲して使う言葉」ですが、「相手に及ぶ行為」というのが彼らにとっては「ビミョー」らしいのです。

レポートをお読みします(?)

「それじゃ先生、部長から『このレポートを読んでおくように。』と言われたら、『はい、お読みします。』と答えていいですか?」
「う~ん、そのときは『わかりました。』とか『読ませていただきます。』かな。部長が老眼鏡を忘れてレポートの字が小さくて読めなくて困っているときには、『私がレポートをお読みします。』と言えるけどね。」
「エ~ッ、頭が痛くなってきた!!!」

さらに彼の頭を痛めたのが、丁重語の「参ります」。

「明日、部長のお宅へ参ります。」これは訪問する社長に敬意を表して使われる「行く」の謙譲語「参る」です。駅でよく耳にする「間もなく電車が参ります。」や「だんだん暑くなってまいります。」は丁重語。電車や天気に敬意を表しているのではなく、単に聞き手に対して丁寧に話す用法です。これを勉強したC君が、翌週レッスンに来て言いました。

「センセイ、大きな台風が来てたから、部長に『台風が参ります。』って言ったら、『君、それはちょっと変だよ。』って言われました!!頭が痛いよォ~。」

日本語

フランス菓子サロン:講座ご報告(2014年6月16日)

2014年6月19日 木曜日

P6160426  table今日のフロランスのサロンは「クレープ&ガレット」です。日本ではクレープといえばフルーツやクリーム、アイスなどの入った甘いデザートというイメージですが、フランスでは町のあちこちに「クレープ屋」があり、料理としてのクレープをリンゴの発泡酒シードルと一緒に楽しみます。日本の「お好みやき屋」のような感じでしょうか。カジュアルな食べ物のようです。でもフロランスのクレープとガレットはちょっぴりグレードアップされています。今日のテーブルも料理に合わせてカジュアルな感じの木目プリントのテーブルクロスとお揃いのナプキンです。(ちなみにイケアで購入されたそう。)近くでみても木質感があっておもわず触って確認したくなります。

 

本日のメニューは次の通りです。

–       Crêpe Complète(クレープコンプレート)
–       Crêpe aux Crevettes et à la béchamel(エビとベシャメルソースのクレープ)
–       Crêpes aux Pommes au beurre salé et sirop d’érable    (りんごのクレープ、塩バターとメーブルシロップ風味)
–       (*)Aumônière de crêpe à la Pêche, crème d’amande et Chocolat blanc
(桃のクレープオモニエール、アーモンドクリームとホワイトチョコレート)

(*) aumônière : もともとはコインなどを入れる袋状のさいふのこと。転じて茶巾包み。)

 

P6160431  faire une crepe (Florence )

P6160435  galette de sarasin

そば粉のガレット

P6160450  pate de crepe

クレープ

まずはクレープとガレットの生地作りから。クレープとガレットの生地の材料はちょっと違います。クレープが小麦粉を使うのに対して、ガレットはそば粉を使います。その他、クレープにはミルクと砂糖、卵が数個使われますが、ガレットは水と卵1個を使います。これを見ても、カロリーの高いクレープ、低カロリーのガレットというのがわかりますね。ガレットは料理用。クレープは料理にもデザートにも使われます。本日の料理2品はガレットで、デザート2品はクレープを使います。

P6160465  deux galettes

Crêpe aux Crevettes et à la béchamel(エビとベシャメルソースのクレープ)
Crêpe Complète( クレープコンプレート)

 P6160457  crepe completeガレットにたっぷりのチーズ(エメンタール、グルイエールなど)をのせて、ハム、その上には生卵をのせて、4辺の縁を折り曲げて四角形にしてフライパンで加熱します。溶けだしたチーズとトロトロの卵がハムにからみ、香ばしいそば粉の香りと相まって、そのおいしいこと!!焼き立てをサービスするのがお約束です。

 

P6160447  crepe aux crevettes et a la bechamelガレットの中央にベシャメルソースを敷き、オリーブオイルで炒めた大ぶりのエビを3匹ほどのせてからくるくると巻いてオーブンでさっと温めます。エビのほか、ベシャメルソースにあうものなら、他のシーフードでもチキン、野菜でもアイデア次第。こちらもアツアツをいただきたいですね。

 

 

P6160468  deux desserts

Aumônière de crêpe à la Pêche, crème d’Amande et Chocolat blanc
 Crêpes aux Pommes au beurre salé et sirop d’érable
(桃のクレープオモニエール、アーモンドクリームとホワイトチョコレート& りんごのクレープ、塩バターとメーブルシロップ風味)


有塩バターで賽の目に切ったリンゴをアメ色になるまで炒め、シロップも加えて煮ます。クレープの真ん中にたっぷりのせてロール状に包み、上から再びシロップを回しかけてオーブンで15分ほど焼きます。 バニラアイスを添えていただきます。バターの塩味がリンゴのやさしい甘さを引き出し、メープルシロップの香りが立ちのぼります。温かいクレープに溶けだしたバニラアイスをからめていただくときの幸福感!!


P6160440  crepe aux pommesP6160451  crepe aux pommes 2P6160452  crepe aux pommes 3

 

 

 

 

 

アーモンドクリームをクレープの中央に丸く敷き、その上に桃(熟したものか缶詰のもの)を2分の1個分を置き、さらにホワイトチョコレートを数片のせてクレープを茶巾状に絞ってraphia(ラフィア:ヤシの繊維で作ったひも)で結びます。クッキング用の糸を使ってもOK。これをオーブンで15分ほど焼いてテーブルへ。まずこれが運ばれてくると、そのかわいい茶巾の姿にテーブルの一同「おーッ!!」ナイフをいれて中からトロンと溶けたチョコレートをまとった桃が姿を見せると再び「おーッ!!」。口に運んで三度「おーッ!!」楽しくて美味なるデザートなのです。

P6160454  aumoniere de crepe a la peche  2P6160455  aumoniere de crepe a la peche

P6160460  cidres

 

 

 

 

 

クレープ料理にはかならずシードルをいただきます。本日はbrut(辛口)とdoux(甘口)がキンキンに冷やして用意されています。甘口のほうがアルコール度数は低いですが、辛口でも5%以下ですから、とても飲みやすいです。チーズやソースを使ったクレープのあとに甘いデザートのクレープですから、どちらかというと辛口が今日の食卓にはあいそうです。

クレープもガレットもたくさん作って冷凍しておけますので、梅雨の一日、台所にこもってクレープとガレット焼きもいいのでは?梅雨明けの夏の暑い午後、冷たいシードルとお手軽クレープ&ガレットで親しい人たちと素敵な時間をぜひお過ごしください。

P6160443  boite de l'hule d'olive

P6160427  bambou

P6160433  essayer de faire une crepe

菓子サロン

アートサロン:フランス地方のアート散策(2):講座ご報告(2014年6月12日)

2014年6月18日 水曜日

P6120429  conference

4月のフランス地方アートサロンに続き今回はフランス南部とパリを散策します。

– Rhône-Alpes(ローヌ・アルプ地方)P6120436 Laurence
– Auvergne(オベルニュ地方)
– Limousin (リムザン地方)
– Poitou-Charentes(ポワトゥ・シャラント地方)
– Aquitaine(アキテーヌ地方)
– Midi-Pyrénées(ミディ・ピレネ地方)
– Languedoc-Roussillon(ラングドック・ルシヨン地方)
– Provence-Alpes-Côte d’Azur(プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方)
– Corse(コルス)
– Île-de-France(イール・ド・フランス地方)

以上でフランスのすべての地方を網羅しました。観光ガイドブックに載っていないような珍しいアート、建物だったり、イベントだったり、大変バラエティーに富んでいます。「芸術の都パリ」とよく言いますが、アートはパリだけのものではないこと、フランスのアートの底力を実感したサロンです。いくつか特に興味深いアートについて簡単にご紹介いたします。

P6120428  ecrin Rhone-Alpes

1)Rhône-Alpes(ローヌ・アルプ地方)

 Palais idéal du facteur Cheval :(郵便配達夫シュバル氏の理想宮殿)
http://www.facteurcheval.com/

ドローム県オートリブという小さな村にこの宮殿はあります。1879年のある日、シュバル氏はいつものように郵便を配達して回っていました。ところがその道中に不思議な形の石にけつまずいてしまいます。その石をつくづく眺めて、シュバル氏はこの石で宮殿を建てることを思いつきました。それからは毎日郵便配達をしながら、石を集め始めました。ポケットに…カゴに入れて…最後には手押し車で石を集めながら郵便配達の仕事を続けました。それらの石を使って、たった一人で、33年間もかけて、ついに高さ12m、全長26mの宮殿を完成させます。その外観はまるでインドネシアやカンボジアの神殿のような建築様式ですが、当時絵葉書が使われるようになって、外国へ旅行した人が送った葉書などの写真を、郵便配達夫だったシュバル氏は、時々目にすることがあったのでしょう。村人たちは彼を狂人扱いしていたようです。確かに狂気が生み出した宮殿です。けれど1969年には「歴史的建造物」に認定されました。何もない片田舎に忽然と現れる石の宮殿、ありきたりの旅行では飽き足らない向きにはお勧めかも…。

 2)Midi-Pyrénées(ミディ・ピレネ地方)

 Viaduc de Millau : (ミヨーの高架橋)
https://www.google.co.jp/search?q=viaduc+de+millau&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=6cCdU5eADYP98QXkwYKwDg&ved=0CBsQsAQ&biw=1366&bih=673

渓谷の霧の中に浮かぶこの橋をどこかで目にされた方も多いと思います。アヴェロン県ミヨ―近郊の渓谷にかかるこの橋は、地上からの高さが343m、全長2460m。バカンス時などに南仏へ下る道路の渋滞を解消するために作られた高速道路の橋です。2004年に開通しました。当時は景観を損ねるという理由でこの計画に反対する住民も多かったそうですが、完成した橋の姿は雄大で、徐々に人々に受け入れられていったようです。パリのエッフェル塔しかり、ルーブル美術館のガラス張りのピラミッドしかり…。そこに出来てしまえば、いずれはそれを含めた風景が当たり前になっていくのでしょう。

3)Poitou-Charantes :(ポワトゥ・シャラント地方)

 Festival de la bande dessinée d’Angoulème :(アングレーム国際漫画祭)
http://www.bdangouleme.com/446,angouleme-cite-des-festivals

フランスの南西に位置するこの地方は、古くからコニャックの産地として知られています。Angoulèmeの町の歴史は古く、ローマ時代にはシャラント川の水上貿易の要地として栄えていたようです。水と緑豊かなこの町を世界的に有名にしたのが、「アングレーム国際漫画祭」。1974年から開催が始まり、毎年1月末に3~4日、世界中の漫画が集まります。この期間に人口わずか5万人弱の町に20万人の人がやってきます。別名「漫画のカンヌ祭」ともいわれるほどです。今年初めに慰安婦問題をテーマにした漫画の展示が話題になったのはこのフェスティバルでのことでした。もうひとつの見どころは「ウォールペイント」。町中の建物の壁にもイラストが描かれていて、こちらは通年見ることができます。歴史的な街並みとポップな壁画アート、ちょっと首をかしげたくなりますが、サイトで見るとだまし絵のようなものもあり、なかなかおもしろそうです。こちらはCité de la Création(創造都市)というウォールペイントのアーティストたち(muralistes)の団体が統括しているそうです。

フランスを訪れる外国人観光客は年間8200万人。フランスは世界一の観光大国です。
古い建造物と豊かな自然が美しく調和し、何度訪れても変わらぬ美しさで迎えてくれる。そんなイメージのフランスですが、今回の2回にわたるロランスのアート散策では、歴史ある建物、芸術作品はもちろんのことながら、現代アートもそれらと肩を並べて、しっかり根付いていることを感じました。都会ばかりではなく、人里離れた寒村や大自然の中にまでアートが増殖しているという印象です。フランスのアートは本当に素晴らしい底力を持っていると再認識させられました。

P6120435 apres la conference

最後にロランスお手製の「アーモンドレモンケーキ」とお茶をいただきました。さっぱりしていておいしかったです。「前回のチョコレートケーキは失敗してふくらまなかったけれど、今日のケーキはもともとこんな風にペシャンコなのよ。」出来合いのものは買いたくないけれど、料理は余り好きというわけではない、というロランスですが、家族のためにも来客にもきちんと料理をするところは立派です。「クックパッド」のフランス版みたいなサイトからいつも「simple, facile(シンプル、簡単)」というものばかりを選んで作っているとか。それでも日本のようにデパートの地下でお惣菜を買ったり、出前をとったりせず頑張っています。偉い!!

P6120424  tasses de the & boites de theP6120426  gateau aux amandes et au citron

 

余りに素晴らしかったこの地方アート散策のツアー、秋には通訳付きで再登場いたします。
ぜひぜひこの感動をご一緒に!!ご期待ください。

P6120439  deco

 

 

アートサロン

Sortie amicale :交流会(5) 谷中散策 2014年6月10日

2014年6月15日 日曜日

連日の大雨で心配された本日の谷中散策、たくさんの「晴れ人間」が集まったらしく素晴らしい晴天に恵まれした!!10:30に日暮里駅に集合。フランス人3人、ベルギー人1人、スウェーデン人1人、日本人5人の総勢10人のグループでお散歩へGO!まずは朝倉彫塑館へ。

朝倉彫塑館(台東区谷中7-18-10)

http://www.taitocity.net/taito/asakura/

P6100429 Musee d'Asakura  l'Interieur

JR日暮里駅北口から徒歩約5分のところにあります。彫刻家朝倉文夫のアトリエと旧住居が美術館になっています。長い間改修工事が行われていましたが、昨年秋にやっと再び見学できるようになりました。ただ、2月の大雪で木造の住居部分に破損をこうむり、6月下旬からしばらく住居部分の見学が制限されるということでしたので、私達は天気といい、幸運の女神に守られたスタートです。天井の高い鉄筋コンクリート建築のアトリエと旧住居の数寄屋造りの建物が、風雅な中庭を囲んで建っています。アトリエの作品はほとんどが人物の彫像ですが、番犬よろしく横たわる犬の彫刻が目をひきます。大正昭和初P6100425  Musee d'asakura 2期の日本人の洋館に対する憧れが凝縮したような建物です。フランス人たちにお気に召したのは旧住居部分の日本建築。2階へ上がると、新しい畳の香りがして、開け放たれた窓からは中庭の木々と池が見渡せます。「ここで一日、寝そべって読書三昧できたらSuperbe(ステキ) !」更に急な鉄製の階段を上って屋上へ上がると、大きなオリーブの木と一面の花壇が目に飛び込んできます。朝倉氏の時代には菜園になっていたそうですが、日本で初めての空中庭園ではないでしょうか? 谷中はあまり高い建物がないので、四方ぐるりと東京の街が眺められます。谷中墓地のこんもりとした緑のむこうにスカイツリー、上野の美術館の建物もかすかに見えます。屋上から下へ降りると、蘭の栽培を趣味とした朝倉氏が作った温室があります。今は蘭はありませんが、猫の彫刻がずらりと並んでいます。朝倉氏は大の猫好きで14匹も飼っていたこともあるとか。首をつかまれて吊るされている猫の像もおもしろい。「おもわずなでたくなっちゃうわ!!」「どうして、谷中には猫が多いの?」というフランス人の質問。美術館のスタッフの方に聞いても「たまたまじゃありません?理由なんてないでしょう。」とのお答え。今日の参加者の一人の日本人がおっしゃった「古来、日本は木造建築なので、ネズミ退治のためにも猫を好んで飼っていた家が多いのでは…」というお答えに外国人参加者の皆様、ものすごく納得されていました。美術館を背景に皆さんで記念撮影。アトリエの屋根の上から男性の彫像が覗き込んでいるのを発見。朝倉氏の遊び心に触れた瞬間です。

P6100424  statut sur le toit du musee Asakura

次は彫塑館を出て、そのまま道を左にとり、通称初音通りを上野方向へ進みます。この道の両側には寺院も多く、車の通りも少ないので散歩には最適です。

長久院(台東区谷中6-2-16)

P6100430 temple Chokyu-in

谷中の紫陽花寺として有名なこのお寺を見学させていただきました。小さなお寺で紫陽花も数が多いわけではありませんが、手入れが行き届いているきれいな寺院です。炎天下の紫陽花は可哀そうなほど首をたれて元気がありません。このお寺は雨の日がベストかもしれません。境内に小さな墓地があり、その入り口には「閻魔大王」の像が据えられています。せっかくなので参加者の日本人の方に日本の墓について説明していただきました。やはり外国人が気になるのが、卒塔婆。また日本は土地が狭いので、欧米の墓碑のように水平ではなく、垂直に縦に長くて、まるで死んでも日本の家屋みたいにひしめきあったところに葬られるし、家族が代々同じ墓に入ると説明があると、欧米でも墓地には限りがあるので、今では家族用の墓というのが増えてきて、棺の上にまた棺と3段くらいは重ねて埋葬が行われることも多くなったとか。パリでは最近火葬して埋葬するケースもあるそう。場所が場所だけに、日仏お墓談義となりました。ランチは千駄木駅そばの「吉里(きり)」へ。

 

吉里(台東区谷中3-2-6)

P6100439  Kiri  entrance

この店は鰻の専門店ですが、懐石料理もあり、人数に合わせて個室、半個室も用意されています。ランチメニューはなく、本日は松花弁当を予約。パリでは日本食がブームで、「お弁当」という言葉もお弁当箱といっしょに認知され始めているようです。8月に帰国が決まったフランス人マダムは、息子さんがフランスへ帰ってもお弁当を持って学校へ行きたいということで、帰国前に「きれいなお弁当箱」を探すのだそうです。松花弁当にはスイP6100435  Chez Kiri  Shokabentoーツと飲み物もついていて、そのメニューを翻訳するのが一苦労。「くずもち」ってフランス語で何??「きなこ」はどう訳す??と日本人参加者の方々も悩みます。   10人それぞれデザートと飲み物はお好みで注文しましたが、運ばれてきたとき一人一人にきちんと注文通りの飲み物とデザートが配られました。これには外国人たちの口がアングリ。「フランスではありえない!!」「日本ではこういうサービスをしないとお客がリピートしないから。」「日本に住んでいて、休みにフランスへ帰ると、フランスのサービスの悪さを痛感する。スーパーで買い物したカゴをレジに置いて待っていると、『さっさとカゴから物をだしてください!!』って言われて初めて、アッ、ここはフランスだったって気づくのよね。」ここでは日本のサービスの良さが話題に。食事中のおしゃべりが一番の「ごちそう」の人たちですから、延々と続きます。どうにか切り上げていただき、最後の目的地「根津神社」へ。

P6100437 chez Kiri  dejeuner

P6100441  devant  KiriP6100442  promenade chemin serpente

 

 

 

 

 

「へび道」を通って根津神社へ向かいます。この道、かつては川が流れていたため、このようにくねくねしているのだとか。車も余り通らず、10人の賑やかなグループは、静かな午後の住宅地にはとんでもない闖入者だったかもしれません。日本語を勉強している外国人たちには、ミッッションを与えました。道をたずねてもらいます。ベルギー人の男性に、酒屋へ入って根津神社への道順をきいてもらいます。「ネヅジンジャは どうやって いきますか?」と店に入る前に一人でモゴモゴと練習。意を決して店内に入り、「ネヅジンジャ・・・・」と言ったとたん、酒屋のご主人、「あっ、それならそこの信号を右に曲がってね、まっすぐ行ってね…」と日本語の弾丸の雨。彼は肩を落として出てきました。

根津神社(文京区根津1-28-9)

http://www.nedujinja.or.jp/

大変由緒ある神社です。徳川5代将軍綱吉が世継ぎが定まった時に建立させた神社。庶民には「つつじまつり」で有名なところです。何でも100種3000株のつつじがあるそうですが、この時期は残念ながら花も終わってしまっていました。けれど稲荷神社の朱色の鳥居が並んでいるところが、京都の伏見稲荷によく似ています。背の高いベルギー人とスウェーデン人は、体を折り曲げて通っていました。

P6100448  Nezu sanctuaire Torii

帰り道、もう一人のフランス人に根津駅をたずねるミッションを。向こうからやってきた男子高校生の二人組にアタック。彼女が近づいて行ったときからすでに彼らの腰はひけていました。彼女が話し始めると、二人とも目をキョトキョト。戻ってきた彼女曰く、「日本人は外国人が怖いみたい!」いやいやそうじゃなく「英語で話しかけられたら困ると思う日本人が多いんですよ。」でもきっとこの高校生のお兄様たち、外国人が近づいてきて、変な日本語で道を聞いてくるし、その後ろの方には国籍不明の外国人たちと妙齢の日本人女性たちがニヤニヤしながら見ているのですから、怪しい新種の「詐欺集団」くらいに思ったかもしれません。

暑かった日差しも少し力を失い始めています。フランス人マダムたちはそろそろお子さんたちが学校から帰ってくる時間です。よく歩き、よくしゃべった一日でした。お疲れ様!!

交流会