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Archive for the ‘日本語’ Category

「台風が参ります。」

7月 15th, 2014
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日本人でも敬語は厄介です。インターネットには若いビジネスマン向けの敬語のサイトがズラリ。まして外国人にとって敬語は超難関です。それでも日本でビジネスを展開したい外国人なら、この敬語をマスターしないと日本人の上司とも顧客ともいい関係が作れません。

フランス人の生徒C君がメールで「今度のレッスンに行かせてくれてありがとうございます。(教科書を)お持参します。」と書いてきました。「丁寧感」はにじみ出ていますが、日本人ならこうは書きません。しかもこの生徒は、敬語の学習のためレッスンを始めることになったのですから、初回レッスン時に、早速訂正することに。

「この度は、レッスンをとらせてくださり/お引き受けくださりありがとうございます。(教科書を)持参いたします。」がいいように思いますが、説明は多岐にわたります。

1)「…てくれる」は尊敬語なら「…てくださる」と言わなければいけないけれど、「レッスンに行かせてくださりありがとうございます。」もあまりしっくりしません。こちらのレッスンではなく、ほかの学校のレッスンをとりたいという申し出に許可を与えたようなニュアンスになってしまいます。

2)また「お持参」ではなく「ご持参」。「お」と「ご」の使い方の決まりは??よく外国人に聞かれます。一応、日本古来の言葉には「お」、漢語には「ご」という説明はあるのですが、例外もあり外国人泣かせです。「ご連絡」と「お知らせ」、「ご招待」と「お招き」。しかし、「お食事」「お返事」というのもあります。

3)また「教科書をご持参します。」と言われたら、「生徒が先生に教科書をあげる/見せる」と解釈してしまいます。

外国人には尊敬語より謙譲語の使い方のほうが概して難しいようです。謙譲語は、「相手に及ぶ自分の行為について卑下謙譲して使う言葉」ですが、「相手に及ぶ行為」というのが彼らにとっては「ビミョー」らしいのです。

レポートをお読みします(?)

「それじゃ先生、部長から『このレポートを読んでおくように。』と言われたら、『はい、お読みします。』と答えていいですか?」
「う~ん、そのときは『わかりました。』とか『読ませていただきます。』かな。部長が老眼鏡を忘れてレポートの字が小さくて読めなくて困っているときには、『私がレポートをお読みします。』と言えるけどね。」
「エ~ッ、頭が痛くなってきた!!!」

さらに彼の頭を痛めたのが、丁重語の「参ります」。

「明日、部長のお宅へ参ります。」これは訪問する社長に敬意を表して使われる「行く」の謙譲語「参る」です。駅でよく耳にする「間もなく電車が参ります。」や「だんだん暑くなってまいります。」は丁重語。電車や天気に敬意を表しているのではなく、単に聞き手に対して丁寧に話す用法です。これを勉強したC君が、翌週レッスンに来て言いました。

「センセイ、大きな台風が来てたから、部長に『台風が参ります。』って言ったら、『君、それはちょっと変だよ。』って言われました!!頭が痛いよォ~。」

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にゃんこ?

8月 13th, 2013
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外国人の方が日本語レッスンを申し込まれると、まずはインタビューをさせていただくのですが、そのとき特に男性からこんな質問をされることがあります。
「それで、教える先生は男ですか?女ですか?」
来日する前に、日本通の友人から「日本語には女言葉と男言葉があるから、気をつけろ!」とアドバイスされることがあるようです。確かに英語やフランス語に女言葉・男言葉というのがあるとは聞きませんね。フランス語のJ’adore(大好き) は女性がよく使う傾向にあると聞いたことはありますが、それでも日本語のように歴然と男女の使用区別があるわけではありません。
「そうよね。」「そうだぜ。」
「もう行くわよ。」「もう行くぞ。」
「やめてよ。」「やめろよ。」
「嬉しいわ。」「嬉しいさ。」
日本人ならそれが女の言った言葉か男の言葉かすぐにわかりますが、これがまた外国人には「目が点!!」の難解さのようです。もっとも近頃は、「ウマそう!」とか「わかんねぇだろ!」「すげェ!」なんていう言葉が若い女の子の口からスルスル出てくるご時世ですから、そのうち女言葉で話すのは「オネエキャラ」の方ばかりとなるのか…。

女教師に習ったら、男なのに「今日、そちらへ行ってもいいかしら?」なんて話すようになるのではないかと心配をされているわけです。勿論、NO!です。日本語の教材もそこは細心の注意を払って、「中性的」日本語路線で統一されています。でも時には教師もびっくりの事態が起こります。
絵カードを見せて、「~の上に~がいます・あります」という存在文をビジネスマンに練習させていると、彼は平然と答えました。

「椅子の上にニャンコがいます。」
犯人は彼の日本人の奥様でした。いつも彼女は猫を「あら、かわいいニャンコね。」というようにお呼びになるものですから、この男性は「はは~ん、あれはニャンコか!」と思い込んで何年も過ごしていたようです。小さな子供がいる家庭では、日本人の母親が子供に向かって「クマさん」「キツネさん」などと言っているのを聞いて、そのまま「北海道でクマさんを見ました。」とお話しになるビジネスマンもいます。これは「女言葉」というより「母親が使う幼児語」の部類でしょうか。
また、他のビジネスマンとのレッスンではこんなことも…。
「北海道へ何で行きましたか?」
お船で行きました。」
彼の奥様も日本人で、家族で横浜へ出かけると、子供たちに「ほら、あそこにお船がみえるでしょ?」といつも言うのだそうです。「なるほど、あれはお船というのか。」以後、日本語教師に「それは女言葉です。」と教えられるまで、彼は「お船の旅行」「お船に乗って…」と何の疑いもなくお使いになっていたんですね。一方、日本人の男性と結婚したあるフランス人マダムは、ことあるごとに「アッ、そうか!!」とおっしゃる。女性でもこれは言いますが、イントネーションが違います。女性は「そうか」の「そ」の部分が一番高いイントネーションで話しますが、彼女のイントネーションは、「そうか」の「か」が一段低く長いので、ちょっと男っぽいのです。きっとご主人の「そうか」を聞いて覚えちゃったのでしょうね。

「男言葉」や「女言葉」を心配している方、日本語学校で日本語を習っていればだいじょうぶです。でも日本人の彼女や彼ができたらご用心!

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「へび」か「えび」か!?

10月 26th, 2012
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在日数十年のフランス人の神父様がいつかこんなことをおっしゃってました。
― 私はいつも悩むんですよ。中華料理を注文するときに、「へびチリソース」だったか、「えびチリソース」だったか…。干支は「えび年」か、「へび年」かってね。

フランス語のHは、表記はされても発音はしません。例えば、日本人の若者が大好きはハンバーガー(hamburger) は、フランス人が発音すると「アンブールジェ」です。どんなフランス料理かと思ってしまいます。北海道も「オッカイドー」となって、なんだかとても怖い場所みたいになります。
日本語のHの行は「ハ・ヒ・フ・へ・ホ」とhをしっかり発音するのだということが、フランス人の頭を混乱させてしまいます。hが要らない言葉に時々わざわざhをつけたり、hが必要な言葉なのについhを発音しないで言ってしまったりします。
日本語の授業では、こうした「言い間違い」は日常茶飯事です。

教師:「ごはんは何で食べますか?」
生徒:「アシで食べます。」

「あし」、「はし」

教師:「これはいくらですか?」
生徒:「ひゃくへんです。」
教師:「ウ〜ン… それ、どこのお金ですか?」

また、ある授業で教師はビジネスマンの生徒に「授受動詞」の絵を見せながら導入をしていました。
教師:「ハイ、これは?」
生徒:「もらいます!」
教師:「ハイ、いいですねェ。じゃ、これは?」
生徒:「ハゲマス!」

自信満々で胸をのけぞらせて答えた生徒のオツムはまさに「アゲテ」いらっしゃいました。
ha?

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