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「大人の天国」VS「子供の天国」

8月 22nd, 2014
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「そんな時はほっぺたに往復ピンタをくらわすのよ!」とブロンド美人のマダム。
「子供が言うことをきかない」とこぼす友達への返答です。

日本では子供に体罰を与えるのは家庭でも学校でもタブー視されていますね。子供を叩いたりせずに、話して諭すのが「いい教育」と考える傾向にあります。叩いてもせいぜいお尻を…と思ってしまいますが、どうやらフランス人の子供の教育は、時として「往復ピンタ」のように少々荒っぽいところがあるようです。もちろん、体罰を与えずに子育てをしているフランス人もたくさんいることでしょう。でもこの「往復ピンタ」教育の例は他でも耳にしました。同じ間違いを何度も繰り返したり、親の話を「フフン」と小馬鹿にして聞いていると、ピンタが飛んでくることもあるらしいです。知的で社交的なマダムたちからはちょっと想像がつきませんが。

いいこと、悪いことを徹底的に教え込む、理屈でわからなければ体で覚えさせる、ということでしょうか。実際、フランス人のママたちが子供を叱るときは、

「トホホ…」

「トホホ…」

はたでみていても相当怖いです。軍隊の隊長が兵隊に命令を下すように、頭のてっぺんから雷鳴のような声で叫びます。「さっさと部屋へ行って宿題をやりなさい!!」「何回言えばわかるの!これを片づけなさい!」「部屋の隅に立ってなさい!!」そう言われた子供は本当に部屋の隅に立ったまま、ママが「もうよし!」と言うまで待っています。10歳の子供が…です!

日本の家庭でときどき耳にする「うるせェな~」なんていう言葉を吐く子供はいません。フランス人の子供にとって親は絶対の存在です。そうして徹底的に仕込まれた子供たちは高校生くらいになると、今度は大人の仲間入りをさせてもらえます。お客様といっしょに食事をすることを許されたり、大人たちと議論をたたかわせたりするようになります。

フランスは「大人の天国」、日本は「子供の天国」だとつくづく思います。フランス人の教育には「性悪説」が基本になっているのかもしれません。「それはいけない、これもいけない…」と教え込んで紳士淑女を育てる。8歳の女の子が「早くハイヒールの靴を履けるようになりたい」と言ったのも、子供の目から見たら特権だらけの大人世界への羨望の表れなのかもしれません。一方の日本人は「性善説」で子どもを見ているのかもしれません。「子供はのびのびと育てなければ」「まあ、子供のしたことだから…」と社会全体が寛容。お客様のまわりでドタンバタンと暴れている子供を誰も注意しないし、遊びに気を取られて食事もそっちのけの子供に「ホラ、もう少し食べてェ!!」と懇願する母親もいます。

おっとりと(?)育てられた日本人の子供は概して「内弁慶」で外では「借りてきた猫」のように大人しいことが多いです。それに反して「怒髪天を衝く」級の怒り方をする母親に育てられたフランス人の子供たちは「外弁慶」。親の見ていないところでは相当な「悪ガキ」に変貌します。「この大人は甘いかな?」と値踏みをしているきらいがあります。

IMG_0002ある時小学校高学年の二人の女の子が日本語のレッスンを受けにやってきました。2回目だか3回目だかの授業の時、二人はわざと消しゴムを机から飛ばして、それを探す振りをして「おさぼり」を楽しみ始めました。二人で床に這いつくばり、クツクツ笑いながら消しゴムを探し続けるのです。そこで「家へ帰りなさ~い!!」と一喝。彼女たちのノートなどをまとめて突き付けて「勉強したくないなら、もう2度と来なくていいから!」とフランス人になったつもりで「怒っているぞオーラ」を発射。ママとそっくりの日本人を見て、さすがにこのあとのママとの悶着を想像してゾッとしたのでしょう。それからは本当に「借りてきた猫」のように従順になりました。

「鞭と鞭とあめ」で育てられたフランス人の子供は、「あめ」だけで育てられた日本人の子供に比べて、懐疑的でちょっと生意気で、扱いにくいところがあります。けれど大人になったとき、電車でさっとお年寄りに席を譲るのはフランス人です。居眠りをするか、スマホゲームに熱中して知らんぷりの日本人の若者を見ていると、子育てはフランス人ママに軍配をあげたくなりますね。

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