今回のマリオンの料理は「シーフード」。料理に合わせてテーブルコーディネートも「海」がテーマです。ブルーのサテンクロスは海。皿の上にはエンゼルフィッシュに折られたナプキン。テーブル中央には大小様々な貝が並んでいます。お子さんたちと一緒に知恵を出し合って出来上がった素敵なテーブル。ただひとつ、「テーブルの真ん中に砂を敷いたら浜辺になるよ!」というアイデアは即却下されたそうですが…。
外は雨ですが、きちんと整頓されたキッチンは明るいオレンジ色の電灯が灯されて、On va commencer !(始めましょう!)の掛け声とともに料理開始です。マリオンいわく、「今日の料理はちょっと上級コースよ。」
まずはメインのNage de crustacés et coquillages en croûte からスタートです。アサリを白ワインで蒸したり、野菜を炒めたり、アサリの蒸し汁に生クリームを加えてソースを作るなど、加熱、冷却という過程があるので、一番時間がかかります。
「サフラン事件」
ソースを作る段階で、ふっとマリオンに料理の神様が降臨しました。「そうそう、このソースにサフランを入れたら絶対いいわ。色もほんのりクリーム色になるし、香りもずっといいはず!!」キッチンのカウンターの下にはありとあらゆるスパイスが並べられています。回転式の棚を何回もくるくる回して、サフランを探しますが、見当たりません。色付けなら「ターメリックは?」という声も上がりましたが、ちょっと風味が違います。「ない!仕方がない。あれがあったら絶対もっとおいしいのに…」残念そうにマリオンはあきらめてあさりのだし汁と生クリームを合わせてミキサーにかけます。しかし、途中で再び「絶対にあるはずなのよ。サフラン。前に見たもの!!」とマリオンはスパイスの棚を物色します。ありません。「おかしいわねェ…残念だわ。絶対サフランを入れたら違うのに!」そしてまたミキサーのスイッチを入れて撹拌しますが…。「おかしい!!絶対あるはずなのに!!」あきらめきれないマリオンは、またもやスパイス棚の捜索開始。「あった!あった!」目を輝かせて立ち上がったマリオンの手にはサフランの瓶が!サフランのパウダーを数回振り入れたマリオンの勝ち誇った顔といったら!!彼女の料理に対する情熱に参加された皆様もおもわず「オーッ!!」と雄叫びを挙げたのでした。
「魚は築地で!」
メインのNageに使用するあさり、エビ、帆立貝、鮭、そしてアントレ用のマグロもすべてマリオンは前日に築地へ仕入に行っていました。種類が豊富だし、新鮮、そして安いのだから、築地がベストよ!確かにエビは美しいオレンジの縞模様も鮮やか。帆立貝もぷっくりと肉厚でつやつやしています。まぐろの切り身は真紅でうっすら表面に脂がのって光っています。
「食器は料理に合わせて調達せよ!」
このNageのためにマリオンはアマゾンですてきな容器を購入しました。白地に藍色の線が幾筋か描かれた涼しげな器です。ところが届いたらなんとプラスティックで、オーブン使用不可。あわてて彼女御用達の合羽橋まで駆けつけ、白い耐熱の容器を8こ購入。これを聞いた参加者の皆様、申し訳なさにフッとため息。
「折り込みパイはホームメイドで!」
折り込みパイは大変!というのが世間一般の認識です。マリオンもそう思っていました。ところが、フランスの料理嫌いの隣人が新年のパーティーで折り込みパイを作ったと聞き、マリオンは俄然発奮しました。その隣人が参考にしたというYou Tubeの作り方をみたところ、とても簡単に作れることを発見。今回もその作り方を教えてくれました。長い長方形に延ばして三つ折りにするのをフランス語でun tour(アン トゥール)というそうですが、マリオンはこれを2回ずつやっては寝かして、合計6回six tours (シ トゥール)してから、Nageの容器にかぶせました。このトゥールを数多くやればやるほど生地はサクサクになるそうです…。確かにすごく難しいわけではありませんが…こっそり皆様で「市販のものを使いましょうかね?」と言いあうことに。でも小麦粉とバターが同量入るこの折り込みパイ生地、目の前でバター一箱分が小麦粉の中に飲み込まれていくのを目の当たりにし、食べるときにはカロリーのことは絶対考えるな、というマリオンの教えを胸に畳み込んだのでした。
「イタリアンメレンゲ」
デザートのスフレグラセは、イタリアンメレンゲを使います。普通のメレンゲと違うのは、卵白を固く泡立てたところへ熱々のシロップを混ぜいれるところです。今ちょっとしたブームのマカロンはこのイタリアンメレンゲで作るそうです。イタリアンメレンゲは、普通のメレンゲに比べてつぶれにくく、しっかりしています。フランボワーズと混ぜるときも、泡がつぶれにくく扱いやすいです。
「料理上手のママを持つ息子たち」
マリオンは4人の子供がいます。そのうち、5歳と11歳が男の子。5歳のルイは将来「星つきのレストランのシェフになる」のが夢で、いつも台所でママにぴったりくっついて料理を手伝っています。彼は将来結婚したら、「奥さんに料理を教えてあげる」そうです。一方、11歳のマキシムは、家族の中で父親と同じくらい食べる大食漢。将来は「料理の上手な奥さんを選ぶ」そうです。フランスでは、マリオンも仕事を持っていたので、もちろんパンは買っていましたが、日本では美味しいパンが簡単には手に入らないので仕方なく自分で作ることに。ところが日々この自家製パンに慣れてしまった息子たちは、フランスの近所の人たちがパンを買っている光景をみて、「どうしてあの人たちは自分でパンを作らないの?」と聞く始末。「何でも当たり前になってしまうのはいいことじゃない。」とマリオンはちょっぴり心配顔。君たち、ママのように毎日胃袋を美味しいもので満たしてくれる女性はそんなに簡単にはみつかりませんよ!
Tartine de Thon mariné aux Tomates , Basilic et Parmesan
(マグロのマリネ、トマトのバジル風味、パルメザンチーズ)
アントレにもアペリティフにも出せる日本人ごのみのテイスト。バジルの風味が食欲を増します。マグロのマリネとパルメザンチーズがこんなによく合うとは!カリカリのパンとマグロのしっとりとした食感がおもしろい。
Nage de Crustacés et Coquillages en Croûte(シーフードのナージュ、パイ皮包み)
こんがり黄金色に焼き上がったパイをフォークで穴をあけたところから、シーフードの旨味を含んだ香りが一気に噴き出してきます。サクサクのパイを崩しながら、えびや帆立、鮭のいろいろな食感が楽しめるおもてなし料理です。
Soufflés glacés aux Framboises (フランボワーズのスフレグラセ)
アイスクリーム?スフレ?美しいピンクのフランボワーズの軽やかなデザートです。カシス、ストロベリー、ブルーベリーでもおいしくできるそうです。フランボワーズの酸味がさわやかです。
Flan Pâtissier (フラン パティシエ:菓子職人のフラン)
メニューにはなかったお菓子をマリオンが特別に準備してくれていました。材料はミルク、卵、砂糖、コーンスターチにバニラ。プリンをちょっと固くしたような滑らかで懐かしい味。
本日のワインは、vin d’Alsace Riesling 2010 (アルザスのリースリング 2010年)です。フルーティーながらキレのいい白は、シーフードの繊細な旨味にマッチしています。
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