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スリッパ

2016年2月15日 月曜日

日本語を教えていると、文化の違いを説明しなければならないことがよくあります。中でも玄関で靴を脱いで家の中に上がるという日本人の生活習慣は、ほとんどの欧米人が一番初めにぶち当たる異文化です。「家に上がる」という表現がすでに異文化です。玄関に段差のある日本家屋なchaussonらではの表現で、「お入りください」と同じくらい「お上がりください」と日本人は言います。英語やフランス語に訳せば、「come in」「entrez」と「入る」という動詞を使います。「お上がりください」は英語やフランス語に直訳できません。次に問題になるのが、靴を脱ぐこと。フランスでも外出先から戻ってきたらchaussonという室内履き、一種のスリッパに履き替えることも多いようですが、あくまでもプライベートな履物のようです。日本人は来客にスリッパを用意しますが、これは裸足で歩かせるのは失礼になるとか冬場なら足が冷えるからなどということで、来客用の特別なスリッパを用意している家庭も多いかと思います。日本文化を見せようと、玄関先でスリッパをそろえて出すと、たいていの外国人は黙ってはいていますが、あるとき元気なマダムに言われました。「オ・ラ・ラ!スリッパをはくなんて、フランスではありえないわ!」私的な履物をわざわざはかされることに抵抗を感じるのだそうです。確かに私も日本人の家で明らかに家族のだれかが常用している感じのくたびれたスリッパを出されるとちょっと引きますが。日本に住んだ経験のあるフランス人は母国へ帰っても家の中では靴を脱ぐ習慣を続ける人もいます。衛生面でも理に適っているというのが彼らの考え方です。そんな彼らでもお客様を自宅に招いたときは靴を履いたままで室内へ案内するそうです。あるマダムが言っていました。「ドレスアップして行って、靴を脱がされたら本当にがっかりだわ。ドレスと靴のコーディネートはとても大切。ステキな靴を履いていると気分も高揚するから、つい素敵なヒールの靴を見つけると買っちゃうの。」と、いつもスニーカー姿しか見かけないこのマダム、靴のコレクションはかなりのものらしいのです。
久しぶりにご主人様と日本を訪れたクレールと夕食を一緒にとることになったある夏の晩。
夫婦そろってラフなジーンズ姿ながら、クレールの足元はクロコ型押しの明るいグレーの華奢なハイヒール。「今回の旅行のために買ったのよォ!」と嬉talons hauts 002しそうに何度も足元をみてばかり。
私たちが着いたのは和食の小料理屋。店のおかみが「恐れ入ります。お履き物はこちらでお預かりいたします。」とあいさつにでてきました。クレール、本当にごめん!!

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