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カルチャーサロン「スウェーデンを知る」:講座ご報告(2014年5月27日)

2014年6月1日 日曜日

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広尾の交差点の雑踏を抜けて聖心大学の敷地に沿って歩いていくと、街並みはにわかに静かな高級住宅地に変わります。マンションかと見まがう豪邸と外国人御用達といった感じの超高級マンションが並んでいます。手足を真っ黒にして走り回るこどもの姿はありません。たまに通りかかる子供はどこかの私立学校の制服をきちんと着て、まっすぐわき目もふらず静かに家路を急いでいるという風情。本日のカルチャーサP5270384  pour souvenirロンのグニラ宅は、そんなハイソな住宅地の一角にあるマンションです。スウェーデンの民族衣装を着たグニラがにこやかにドアを開けて迎え入れてくれます。国旗と同じ青と黄色を合わせた衣装には、可愛い花の刺繍がほどこされています。この民族衣装は、王室の方々も全く同じものをお召しになるのだとか。スウェーデンの紹介をしてくれるということですが、これはかなり気合が入っています。広~いリビングに通されると、まずは飲み物と彼女手作りのケーキのおもてなしを受けます。フワフワのチョコレートケーキにココナツがトッピングされています。柔らかくて様々な味が重層的に口の中で広がるこのケーキのなんと美味なこと!そしていよいよリビングの大きなディスプレイを使ってスウェーデンのプレゼンテーションが始まります。地理から始まり、自然、歴史、政治、文化、経済、社会とあらゆる角度から映像を使って(時には音楽も!)説明がありました。知っているようで知らなかった北欧の国が急に身近なものに感じられる素晴らしいプレゼンテーションでした。おもしろかったことを少し以下にご紹介いたします。

― ヨーロッパでは3番目に大きな国。人口はわずか950万人。その90%が南部に集中しています。夏でも北部では12度、南部で18度と涼しいですが、冬は北部で―15度、南部で+1度まで下がります。一年で一番日照時間が長いP5270395 decoのが、6月中旬で、平均20時間。北極圏近くの地域では全く太陽が沈まない、いわゆる白夜になります。反対に12月中旬には一日6時間しか太陽が現れません。北極圏の地方ではまったく日が昇らないところもあるそうです。

― 首都ストックホルムはMalaren湖に浮かぶ14の島を50ほどの橋でつないで出来た都市。ストックホルムの土地の30%が運河で、公園などの緑地も30%ほど。水と緑豊かな都市です。

― スウェーエンといえばバイキング。17世紀にはバルト海の諸国にまで勢力を伸ばしましたが、戦争に次ぐ戦争で国は疲弊し、存亡の危機を経験したスウェーデンは、平和国家の道へと大きく舵を切ることに。ヨーロッパ諸国の中で2回の世界大戦に参戦しなかった数少ない国のひとつだそうです。

― スウェーデンは「男女平等社会」。国会議員の50%は女性が占めています。羨ましいのは「産休制度」です。子供が生まれると基本的に両親双方が産休を交互にとって育児を分担します。およそ7割の父親がこの産休をとるそうです。有給産休が認められているのは480日間。父親と母親双方とも最低60日の産休をとり、残りについてはどちらかが担当するというもの。この男女平等の精神は王室の後継者についても反映されています。かつては王位を継承するのは「一番上の男の子」でしたが、1980年に「一番上の子供が継承する」と法律が改められました。それで現在のカール国王の後継者は長女のヴィクトリア王女となっています。

― スウェーデンの社会保障制度も有名です。収入が多ければ支払わなければならない税金も高額になりますが、その税金はきちんと国民に還元されています。医療費も教育費も基本的に無料で受けることができます。「子供から老人まで」手厚く保護されているのですね。

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― 今やスウェーデンと言えば、その優れたデザインを抜きには語れません。服のH&Mは勿論、イケアの家具やインテリアグッズは、日本にもあっという間に浸透しました。スウェーデンのインテリアデザインが優れているわけは?それは暗くて長い冬と関係があるそうです。どうしても室内で長時間過ごすことになりますから、快適に暮らせるように工夫していかなければなりません。ポップな色調やお洒落なデザイン、灯りなどを上手に取り入れて外の暗さとは反対の明るさを演出するようになりました。スウェーデンの家は木造で赤色のペイントで塗られていることが多いそうですが、暗い冬には太陽のような明るい色が必要なのでしょうね。

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― スウェーデンの企業も有名なものがたくさんあります。ミルクやジュースのパッケージを作っているTetra Pak(テトラパック)、H&M, イケア。Skypeは現在マイクロソフトに買収されてしまいましたが、もともとはスウェーデン企業でした。スウェーデンの代表車のVolvo。こちらも残念ながら今は中国企業の傘下に入ってしまいましたが。

― それから忘れてはいけないのが「ノーベル賞」。ダイナマイトの発明などで莫大な富を築いたAlfred NOBEL(アルフレッド・ノーベル)の遺言に従って、毎年12月10日にストックホルムで、文学、医学、物理学、化学、経済の分野で功績のあった人に賞が授与されます。平和賞だけは同じ日にノルウェーのオスロで授与されます。これはノーベルの指示によるもので、彼が生きていた19世紀にはスウェーデンとノルウェーは連合国家だったからだそうです。

ほんの概略だけをご紹介いたしましたが、これだけ見てもスウェーデンという国の力、魅力がお分かり頂けるのではないでしょうか。オーロラや「氷のホテル」、大自然など枚挙にいとまがありません。最後の一手は、スウェーデン料理です。それではグニラのキッチンへと移動いたしましょう。

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ビュッフェ式でいただく料理は以下の通りです。

―ニシンのマリネ  じゃがいもと卵を添えて
―サーモンマリネ  サラダとともに
ースウェーデン風ミートボール
―ジャンソンの誘惑 (ポテトとアンチョビーのグラタン)
―チーズ
―クラウドベリーのパルフェ(アイスクリーム)
飲み物:AKUVAVIT(アクバビット)& スウェーデンのビール

 ニシンのマリネは残念ながら生のものが入手できなかったため、瓶詰の4種のマリネをいただくことに。他の4品はすべて作り方をデモンストレーションしてくれました。

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ニシンのマリネ

いろいろなマリネ液があり、どれもおいしい。ゆでたじゃが芋とゆで卵と一緒にいただきます。

サーモンマリネ

P5270400 saumon marine塩、こしょうと砂糖、そしてディルを刻んだものをサーモンの身にすりつけて、重石をして2日間冷蔵庫でねかせておけば出来上がり。酢を使わないので、かすかな甘みとディルのさわやかな香りが楽しめます。

 

 

スウェーデン風ミートボール

生クリームで数分しとらせたパン粉とひき肉(牛肉、豚肉、仔牛肉)、玉ねぎ、卵、ナツメグ、塩、こしょうを混ぜ合わせ、ボール状にします。これをフライパンにバターといっしょに加えて焼きます。フワフワの出来上がりになります。

 ジャンソンの誘惑  グラタン

P5270401 anchois sans huile玉ねぎとじゃがいも、アンチョビーを交互に耐熱皿にしいて最後に生クリームをかけ、パン粉を振りかけて、オーブンで焼くだけのシンプルな料理ですが、とてもおいしい!今回は「アンチョビーの水煮」を使用。手にはいらないければ、オイル漬けのアンチョビーでもOKです。

 

 

P5270421 parfait aux baies polairesクラウドベリーのパルフェ

卵黄、砂糖、水を湯煎しながら混ぜ合わせてクリームを作ります。固く泡立てた生クリームとクラウドベリーのジャムを入れて混ぜ合わせ、冷凍庫に4時間ほど入れておきます。クラウドベリーのプツプツ感がおもしろい、軽くて上品な甘さのアイスクリームの完成です。

P5270416 liqueur 40 degres食卓では、AKVAVITというじゃが芋の蒸留酒とスウェーデンのビールがサービスされました。

AKVAVITは冷たく冷やしておいて、食卓でビールといっしょにいただくそうです。42度もありますので、寒い冬にはさぞ体が温まることでしょう。

グニラの素晴らしい「おもてなし」とAKVAVITの相乗効果で、私達の心もホカホカ温かくなりました。 Tack, Gunilla ! (ありがとう、グニラ!)

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