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フランス料理サロン:講座ご報告(2014年2月13日)

2014年2月16日 日曜日

マリオンのリビングの大きな窓の向こうには鉛色の空が寒々と広がっています。室内の暖かさと外の冷気が窓ガラスを境にせめぎ合い、水滴が幾筋もガラスの上を流れて行きます。こんな日は、台所で火にかけた鍋の中で肉がクツクツと煮える音や、チョコレートがオーブンの中で焼ける甘い匂いに包まれてホッコリしていたい、まさに「料理日和」です。「今日はどれも超カンタンよ。ただ煮る時間が長いだけ!!」とマリオンの元気な声でレッスンが始まります。

本日のメニューは次の通りです。

Entrée(前菜) :Rillettes de porc (豚肉のリエット)

こんなに簡単に本格的な味のリエットが作れるとは!!感動のレシピです。とにかく豚のバラ肉をスパイスとにんにく、月桂樹の葉、そして塩こしょうを入れてコトコトと3~4時間煮込むだけ。市販のリエットのように脂っぽくなくて、舌触りも滑らか。バゲットにたっぷり塗っていただくと、ワインが進みます。そのままでも十二分に美味しいですが、粗塩やエスペレットを少々ふっても味に変化がつきます。一人ずつに小さな容器に入れてサービスされました。心憎い演出です。

Plat(メイン)    :Navarin d’Agneau (子羊肉のシチュー)

アニョー(子羊肉)の独特の臭いが苦手な人は、日本人だけではなく、フランス人にもいるそうです。でも、復活祭のときにはやはり欠かせないのがこの料理なのだそうです。調理はいたってシンプル。玉ねぎ、にんじん、かぶと肉をコトコト煮込みます。にんにくとたっぷりの白ワイン、トマトペーストが味の決め手。肉は柔らかく、かぶとにんじんの甘味が絶妙です。寒い日にフーフー言いながらいただくには最適の料理です。付け合せにポテトを添える場合もあるそうですが、マリオンのおすすめはクスクスの付け合せ。

 

 

Dessert(デザート):Fondant au chocolat avec sa crème anglaise

(フォンダン・オ・ショコラ, クレームアングレーズ添え)

バレンタインの前日にぴったりのチョコレート菓子です。チョコレートとバター、卵、小麦粉少々を混ぜたフィリングの中にチョコレートの塊をひそませてオーブンで焼き上げます。熱々のケーキにクレーム・アングレーズを添えます。ケーキを割ると、中からチョコレートがトロリと流れ出てくるところを、クレーム・アングレーズと混ぜていただきます。温かいチョコレートと冷たく冷やしたクリームのマリアージュです。クレーム・アングレーズを作る時間がちょっと…という方には代わりにバニラアイスをお勧めいたします。焼き立てが身上のお菓子ですから、サービスする直前に焼き上げます。作った人の心のように熱々のとろけるチョコレートケーキは、きっと相手の心と胃袋を「わしづかみ」にすることでしょう。

本日のワインは、初めCôte de Castillon (コート・ド・カスティヨン)を用意していましたが、マリオンがサービスする前にカラフに移したものを試飲したところ、「おいしくない!」ということで、別のボトルになりました。「これはブッフ・ブルギニョンにでも使うわ。」そしてサービスされたワインがこちら。Tour St. Bonnet Médoc 2008。アニョーに負けないパンチのあるワインです。今日のようにホストは客にふるまう前に、自ら試飲して、そのワインの味に責任を持つのですね。かつて本国帰国が決まった生徒がワインをプレゼントしてくれたことがありましたが、その銘柄を聞いた彼女のご主人様は「とんでもない!」と翌日わざわざ違うワインを届けてくださったことがあります。今日のワインといい、そのときのワインといい、こちらには余り違いがわからなかったかもしれませんのに…。

高級なレストランでワインを注文すると、まずはソムリエが恭しくワインの栓を抜き、注文した人物に「いかが?」とグラスに少し注いで試飲させますね。もし美味しくなかったら、そのように言えば別のワインと取り換えてくれるそうですが、ちょっと勇気がいります。そのような状況を作らないのがまたソムリエの仕事でもありましょうが、出されたワインがどれも美味しいと感じられる「味覚の幅」(言い換えれば「味音痴?」)に甘んじているのが身の程と思っております。

リエットをここまでの完成度に高めるまでには何回も試行錯誤を重ねたというマリオンの味覚に対する妥協のない真摯さ、こういったマダムたちの繰り出す家庭料理がフランス食文化を下支えしているのだと痛感します。完成したレシピーをいただいて、その通り作りさえすれば感動の料理が再現できるこのサロンは本当にお勧めです!研鑽して得た秘訣まで惜しみなく教えてくれるマダムたちとの友好の絆を大切にしたいものです。感謝!!

 

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